平成25年2月16日(土)、静岡市女性会館(アイセル21)で、静岡市生物多様性シンポジウムが開催されました。
今回のシンポジウムのテーマは、
「みんなで参加し伝える、生きもののつながり」
~清流の都・静岡を将来の子どもたちへ~
私たち人間が、多様な生きものの“つながり”を構成する一員であること、このつながりからもたらされる恵みにより豊かな生活をしていること、このつながり・バランスが崩れてきていることを市民の皆様に広く知って欲しいという想いで、シンポジウムは開催されました。
150名の定員で募集をお掛けしたところ、当日には210名の方にご参加いただき、とても盛況に会を開催することができました。
ご来場いただきました皆様、講演・パネルディスカッションにご参加いただきました皆様、ブース展示にご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。
さて、まずは会場のご紹介☆
会場には、静岡市で生物多様性の保全に関する活動を実施している市民団体・企業・学校等、22の団体と関係行政にご協力いただき、ブース展示を行いました。静岡市の自然環境の魅力や、各団体の活動、研究内容などを紹介していただきました。
南アルプスで行われている活動から、里地里山での活動、河川・湿原での活動、駿河湾の深海での活動まで、静岡市の様々なところで行われている様々な活動が紹介されており、会場は、多くの参加者でにぎわいました☆
また、NPO法人静岡県自然史博物館ネットワークさんにご協力いただき、「ミニ博物館」も開催されました。
静岡で見ることができる生きものを、標本展示や写真により紹介いただきました☆
それでは、内容について簡単にご紹介☆
まずは記念講演。今回のゲストはなんと、世界的な鳥類研究者である、山階鳥類研究所名誉所長の山岸哲先生!!
山岸先生に、「トキはなぜ禿げたか」というテーマでご講演をいただきました。
トキを取り巻く佐渡の自然環境とトキがどう関わっているのか、食物連鎖などの話題を中心にトキに関連する生きものや人々の暮らしとの関係についてご紹介いただき、いのちのつながり、バランスを保つことの重要性についてご講演をいただきました。
トキを守るためには、トキだけを生かすのではなく、周りの生態系を含めた多様な自然環境を復元することである、というお話が、とても印象的でした。
記念講演後は、3つの会場に分かれ、パネルディスカッションが開催されました。
(それぞれのパネラー、コーディネーターは、チラシをご覧ください(PDFファイル))
ひとつめの会場では、
「知りたい!行きたい!南アルプス・井川を目指して」
~活かす自然と守る自然~
をテーマに、ディスカッションが行われました。
各パネラーから、ライチョウや高山植物などの南アルプスの貴重な自然や川狩(川を使って木材を流しおろす)の歴史、自然の恩恵により発展してきた文化など、南アルプス・井川の魅力を紹介していただき、生物多様性の恵みによる自然・文化・人の魅力をどうやって広くみんなに伝えていけるか、について議論が行われました。
その後、「井川」と「南アルプス」をどうやって関連付けていくか、南アルプスの玄関口として、南アルプスに向かう人達が井川の集落を素通りせずに井川に一度集まる仕組みがつくれないか、について意見交換が行われました。
パネラーからは、
●温泉など個々の魅力要素はあるが、全体として時間を過ごす場所が少ない
●散策プラン等も含めて魅力作りをして欲しい
●今目指しているユネスコエコパークに登録されると、世界中から注目される。その時のために、雑誌等に載せてもらえる魅力をつくっていかなければ
●自分たちの地域の魅力は、そこに住んでいる人にはなかなか見えづらい部分がある。自分たちでわからなければ、余所の方の別の視点で見てもらうのもひとつの手
●山小屋開設期間などを見ても、今の井川は観光シーズンが短い。観光シーズンの幅を拡げていって欲しい
といった話などが出ました。
また、参加者からは、狩猟文化を活用したまちづくりの提案や、井川の村にビジターセンターをつくる提案、南アルプスの森林から出る間伐材を活用した「間伐材チップ風呂」を井川の名物にする提案などがあり、参加者と一体となって、井川の魅力づくりについて意見交換が行われました。
ふたつめの会場では、
「人と自然の絆の場、里地里山とどう付き合う?」
~自然を守り、学び、将来へつなぐために~
をテーマに、ディスカッションが行われました。
パネラーの方々に、幼少期の自然体験の思い出や、現在行っている環境教育や保全活動などを始めようと思ったきっかけなどを紹介いただき、活動内容や活動エリアの魅力を語っていただきました。
その中で、耕作や管理がされなくなった森林や田畑が荒れ、竹林化してしまうなどの問題が提起されました。
意見交換では、「人が入って手を入れてこそ里地里山」をキーワードに、里山に人々を呼び込む工夫や課題などについて話し合われました。
パネラーの方々からは、
●奥山に人を呼び込もうとしてもすぐには人は動かないので、まずは街の中で自然を感じ始めてもらえるイベントなどをして、その人達の気持ちを少しずつ里山に向けていきたい
●活動が持続されるためには、活動費を維持できることが必要。参加費をいただいても成立するような魅力ある体験プログラムをつくるため、ターゲットの望むプログラムづくりに工夫をしている
●見せられる、魅せられる畑づくりにこだわっている
●子育て世代のお母さんが、この世界で生きていく事を実感した瞬間が大事であり、里山を絡めた体験を行う場をつくることが必要
などの意見がでました。
また、里山地域の人達との連携や、人づくりについて、
●地域の人達は、その地域の伝統文化に基づいて生活をしてきているので、そこを理解し、感謝の気持ちを持って接することが大切
●受入や活動の実績を積む。継続する。結果を外に出す。などで地域に認められていくようになる
●個々で好きなことをやる、命令しない。個人参加型、自主参加型がよい
●『始めたらやめるな!』これが唯一の極意。やめなければ色々ある。そのために、事業化した
●様々な活動の中ででてくる新しい関係、発見を大切にする
などの意見を出しながら、活動を盛り上げていくためにどうしたらよいのかを、参加者と一緒に考えました。
みっつめの会場では、
「静岡市の自然と、生きもののつながりを守るためには?」
~清流の都・静岡を将来へつなぐために~
をテーマに、ディスカッションが行われました。
昆虫・植物・水生生物・は虫類などを対象に静岡市内の調査研究に携わってきたパネラーの方々が、過去の調査や保全活動、調査してきた自然が今どのように変化しているかなどを紹介いただきました。
南アルプスに生息する蝶類の特徴や、安倍川に生息するアユが近年減少している話、麻機遊水地の植生の変化、カミツキガメやアカミミガメ(ミドリガメ)を中心としたペット遺棄の現状などが、スライドなどを用いて紹介されました。
植物の押し花標本が紹介されたり、カメのペット問題の話では、大きく成長したアカミミガメ(ミドリガメ)の実物が会場で紹介されるなど、それぞれとても興味深い話をいただきました。
その後、人間が自然環境にいろいろな影響を与えていること、そういった意識が全体的に低いこと、などが問題提起され、「生物多様性の保全の重要性を市民に知ってもらうためには今何が必要か」というテーマで意見交換を行いました。
パネラーの方々からは、
●絶滅の恐れの高くなったものを守るのは難しい。絶滅危惧種になってしまう前の、普通種でいられている環境をなるべく壊さないようにする流れが必要
●里山の荒廃、耕作放棄地など、生業と関係なくなってしまった土地の放棄による問題への対策が必要。人間がきちんと管理しなくては
●希少種となってしまった生きものをきちんと保護する施設、生物多様性センターのような施設が必要
●購入者の年齢制限や、購入時に大きくなった姿の展示を義務づけるなど、ペットの遺棄が減るような普及啓発・ペットの衝動買いを防ぐ仕組みづくりと、犬猫以外のペットの引き取りシステムが必要
などの意見が出ました。
記念講演、パネルディスカッション、展示ブースなどを通じて、静岡市の自然環境の魅力や、それを守り、次世代に引き継いでいくための取り組みなど、多くのことを学び、考えさせられる機会となったのではないかと思います。
来年も、生物多様性シンポジウムが開催できるよう頑張っていきたいと思いますので、来年もぜひ、シンポジウムにご参加ください☆
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